違う世界の住人...ではなかった
モルガン・スタンレーを辞めたのちに開いた料理教室がセレブに大人気。
ティファニー、ディオール、高島屋などのフードコーディネートを手掛け、大使関係者や企業経営者のプライベートパーティをプロデュース。
きれいにカールした髪、ドレスで料理。美しすぎるテーブルセッティング。
もう、ため息でちゃう。完全に違う世界の住人だわ...と、こめかみにサロンパス貼りながら引きこもって原稿書いてる私は思っていました。
しかし、です。
コルトンさんの華々しい成功は、決してシンデレラストーリーではありませんでした。
帰国子女で物心ついたときにはバイリンガル...なわけではなく、社会人になってから1年の語学留学。
(しかも、あえて日本人の少ない大学選んでるし)
有名お料理学校で優雅に料理を学んだ....のではなく、幼い頃に母親を亡くし、妹たちを喜ばせたくてお料理の腕を磨いた。
美人だし、ちやほやされて苦労せずに生きてきた...なんてこともなく、母国から離れたニューヨークで離婚。帰国することなく再就職。
(その後再婚されて幸せな家庭を築いていらっしゃいます)
もう、その優雅で華やかなイメージとは違い、苦労もあったし、ものすごい努力をされているのです。
幸運が降ってきたシンデレラではなく、自分から夢を掴みにいった果敢な勇者でした。
ビジネスの極意をあますことなく
「好き」の見つけ方、コンセプト設計、コミュニケーションからブランディングまで、ビジネスに必要なステップが全て網羅されています。
しかも、歯を食いしばって頑張れ!ではなく、「好きなことをとことん追求していこう!」というメッセージが一貫して込められているのです。
そして、なかなか書きにくいお金の話までしっかりと語られています。
著者のひでこ・コルトンさんは、ビジネスのコンサルティングもされているそうですが、ここまで公開してクライアントさんから文句が出ないのかと不安になるくらい。
サラリーマンコンサルタントが放つ机上の空論ではなく、実際に自分でビジネスをされているからこその説得力。
ひとつひとつのアドバイスの重みが違います。
◆きょうの一文◆
「チャンスは人を介してやってくる」(P.70)
才能があって努力もしているのに、「人とのつながりによってビジネスチャンスを掴んできた」と、とても謙虚。
これは、日本流の謙遜ではなく、心からそう思っていることが随所から伝わってきます。
この本の全編を通して、読者は気づかないうちに「おもてなし」されているようです。
人を介してやってきたチャンスは、自分で狙って起こせるものではないし、再現性もありません。
「あなただからできたんでしょう」とか「運がよかっただけじゃない」などと言われていまいそうなところですが、このチャンスの確変を起こすための方法も、しっかり書いてあります。
これからビジネスを始めたい人にとっては、コース料理を味わうように、心構えやメソッドをトータルで学べる一冊です。